物語を紡ぐように、ブランドを設計する

Haruka Yanagisawa

企業の顔ともいえるコーポレートサイト。そこには様々な様相があり、美しいもの、かっこいいもの、華やかなもの、簡潔なもの、企業の数だけ個性があります。と同時に、その背景に存在する作り手側のアプローチにも、作り手の数だけ、個性があるのではないでしょうか。そこで今回は、Web制作会社LIGさんのブログ(※)でも紹介された、プロレド・パートナーズさんのブランディング事例をもとに、コーポレートサイトの制作過程に光を当てます。
※「【東京にあるWeb制作会社編】LIGのクリエイターが「いいデザイン!」と思わずうなるWebサイト13選」
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富田良祐

1988年生まれ福岡県出身。京都のデザイン会社にて数年働いた後、2014年からB&Hに参加。手掛けたWEB DESIGNは「Awwwards」「CSS Design Awards」「French Design Index」「Design Awards Asia」など多くの賞を獲得。国内外のメディアにも数多く掲載。趣味は山登りやアウトドア。音楽。


金山健太郎

1993年生まれ島根県出身。関西を中心に制作会社で数年働いた後、2017年にB&Hに参加。以降ディレクターとしてプロレド・パートナズ、Fringe81、TAGPIC、ESTYLEなど、様々な企業のコーポレートブランディングにてコミュニケーション設計を中心に担当。


─ LIGブログの記事を読んで、どんな感想を持ちましたか。

富田: 色々なwebサイトの中でも、コーポレートサイトってどうしても堅くなるもので。その中でデザインが良いと言ってもらえるのは、率直に嬉しかったです。
金山: このサイトをローンチしたのが今からちょうど1年ほど前。僕にとってはBees & Honey(以下、ビズハニ)に入社して最初に手がけた案件でした。そういう意味でも印象深く、こんな風に見てもらえたのは嬉しいです。ビズハニでコーポレートブランディング全体をやらせていただいたので、作ったのはサイトだけではなく。
富田: キービジュアルに始まり、封筒や名刺などのビジネスグッズ類、会社パンフレットなども作りましたね。

軸となるものをまず定める

─ LIGブログでは、このサイトのデザインやアニメーションが「隙のないクリエイティブ」と評されていて。ただその細かい話に入る前に、そもそもこのプロジェクトではどのような課題や狙いがあったのか、大枠の説明をいただけますか。

金山: プロレド・パートナーズ(以下、プロレド)さんからは、上場前にしっかりとブランドを確立しておきたいというのが相談のメインになっていました。そういうクライアントさんって多いんです。そこでまず、弊社のストラテジックプランナーと、ディレクターの僕とで戦略設計の部分、「ブランドスプリント」と呼ばれる作業を行いました。競合分析や顧客分析、自社分析などを含めて、今後どんな企業になっていきたいか、企業の「あり方」を探る。そして、ブランドの「イデオロギー」というものを策定するんです。

今回の場合だと、プロレドさんの社員全員に参加いただいてワークショップを行い、自社の強みや弱みは何か、ベンチマークしている会社はどこなのか、などを細かく聞き出していました。

そこでわかったのは、プロレドさんには「情熱的に思い入れを持って仕事に向き合い」「確実に成果を出す」といった強みがあるということ。そして、その根底にあるものは何なのだろうかと紐解いていった結果、僕らが導き出したのが、「考え抜く」というキーワードでした。それが今コーポレートサイトに出ている、「Think out」なんです。

─ まず、企業の「あり方」を掴む。そして「ブランドのイデオロギー」を定めるんですね。

金山: はい。それがあった上での、伝える手段として、web制作やパンフレット制作といったものがあるので。コーポレートサイトで「Think out」の下に掲げている「価値にこだわる」というワードに関しても、代表取締役の佐谷さんがすごく大事にしている考え方なんです。ただそれが、以前にはしっかりと言語化や表現がなされていなかったので、僕らが言語化と視覚表現のところでお手伝いさせていただいた、という感じです。

─ ブランドイデオロギーを定める作業には、デザイナーも参加するのですか。

金山: ブランドを体現するものを作る上で、会社の空気感や、経営者のキャラクターを理解することは大切なので、ワークショップには基本的にデザイナーも参加するようにしています。

─ それが終わって、ようやく制作に入るんですね。

富田: 「Think out」という言葉が出たことで、一番大切にしなければいけない軸が決まったので、そこから高田がキービジュアルを、自分がロゴ、名刺、封筒、パンフレットやWEBのUIなどを考えていきました。今回のキービジュアルに関していうと、「Think out 価値にこだわるから考え抜く」、という言葉がすっと頭に入ってくるようなものとして、人が考えている絵になっています。

─ 色やトーンについてはどのように決めましたか?

富田: 最初の分析段階で、ポジションマップを作っているんですね。競合やベンチマークしている会社とクライアントの位置をマッピングして、「今はこのあたりにいるから、ブランディングを経てこのあたりに行こう」というイメージ図があって。それも頭に置きつつ、競合との差別化も意識しながら考えていきました。

その中で、色は赤で、とか、もう少し堅実なイメージを出したほうがいいんじゃないか、もう少しポップなほうがいいんじゃないか、などを微調整していって。クライアントへの提案段階では、キービジュアル、ロゴ、webサイト、名刺、グッズ、広告イメージなど、全てを一覧できるモックアップを作成し、ブランドのトーンセットを作っていきました。

イデオロギーを、
デザインに昇華させる

─ ディレクター目線では、どのようなことを意識していましたか?

金山: 「Think out 」を軸としつつ、コンテンツに落とし込む際には、ページごとに、ビジネス向けなのか、採用応募者向けなのか、投資家向けなのかによって、コミュニケーション手法を変えることを意識しました。たとえば事業紹介ページはToBなので、少し堅めに、キャリアページは学生向けに少し崩して、といった感じです。ページごとのターゲットに対し、最適なコミュニケーションで正確にブランドを当てていく、というのをやっています。ただ「Think out」という軸は変わらないので、一貫性が失われることはないんです。

─ オープニング演出やアニメーションには、どんなこだわりが。

富田: 一番特徴的なのは、冒頭で、「Think out」の文字がぐちゃっとなってからパッと開くところ。あと、キービジュアルが、光って切り替わるところですね。これらは、「Think out」つまり、「考えて考え抜いたからこそ、良い答えが出る」というイメージで、最初ぐちゃぐちゃになっていた考えがパッと開いて、整理整頓され正しい答えになる、というのを表現しているんです。

金山: ひらめき、みたいな。
富田: ひらめきですね。キービジュアルが切り替わる時の光も、ひらめきの光をイメージしていて。「考え抜く」とはつまり、考えることで物事がクリアになっていくこと。そういうイメージを出せたらいいなと思いました。

─ なるほど、すごい腹落ちしました。スクロールまわりに関しては?

富田: プロレドさんは経営コンサルティングの会社で、どうしてもコンサルって堅いイメージを持たれがちなので、スクロールのアニメーションに関しては、ある程度、遊びを出そうと思ったのが一番の理由です。

─ たしかに、少し柔らかみを感じます。

富田: あ、そうですね。「正当性がありしっかりしていて強そうだけれど、物腰柔らかい」みたいな雰囲気は、もともとプロレドのみなさんが持っていたので。その雰囲気が、こういう動きから伝わればいいなと思いました。

─ 「社員の方々の雰囲気」がスクロールの質感にリンクしていたとは・・・・・・

富田: 社員や代表の方の「雰囲気」などもオモテに出してあげると、企業イメージが効果的に伝わり、良い採用にもつながるし、良いビジネスにもつながると思うので。
金山: ちょっとしたアニメーションなども含め、全ては「考え抜いた結果、確実な成果を生み出す」という、プロレドさんならではの仕事姿勢や思想を体現していますね。
富田: そこの考えが抜けると、クリエイティブだけで判断してしまうことがあるので。制作中はもう何度も立ち返って、「Think out」だったよね、っていうのを意識しながら進めていました。

キャリアページの
「崩し」

─ キャリアページに行くと、少し印象が変わります。

富田: こちらはちょっとポップに。簡単に言うと、とっつきやすくしたという感じです。コンサルって難しそうとか、敷居高そうとか、そういう重さみたいなところを、少しでも払拭しようと。軸は残しつつ、同時に親しみやすさが感じられるようにしました。
金山: 設計面については、今回のようにコーポレートサイトの中にキャリアページが入っている場合、そのまま作るとコーポレートサイトのトーンと一緒になってしまうのですが、まったく同じにはしたくなくて。学生がこのページに来たときに、ちょっとフックになるもの、「お」と思わせるコンテンツを設けたいと思いました。そこで、「Welcome a Thinker」という言葉を冒頭に出して。「Think outできる人を求めているだんよ」と打ち出し、ほかのページとの差別化をはかっています。

─ 社員インタビューの写真も全員「考える」ポーズ。徹底していますね。

金山: PCで見ると分かりやすいんですけど、考えている写真から、ひらめくポーズに切り替わるようになっています。

─ これだと、長い文章を読み込まなくても、一目見て、この会社に自分が合っているかどうかイメージしやすいです。

富田: こういう特徴的な表現をすることで、直感的に自分が合うかどうかわかるし、「こういうところで働きたい」という憧れみたいなものも、喚起できればと。

作っては捨てられる虚しさ。
「意味あるモノづくり」を求めて

金山: コーポレートサイトをローンチした後にも、「今度こういうことやりたいんですけど、デザインどうしたら良いですか?」と相談してもらえることって多いんです。最近もプロレドさんから、学生向けに学食トレイに広告を出したいという話があって、クリエイティブ作りをやらせてもらいました。

─ そうやってその後も相談されることは多いんですか。

金山: 多いですね。最初のキービジュアルから作らせてもらうと、クライアントの中でも「やっぱりかっこいいものが良い」という感覚が全社的に波及し、それを崩したくないと考える企業様が多いようです。やっぱりこれも作りたい、あれも作りたいと依頼をもらいます。
富田: 「また次も」と依頼をいただき、どんどん展開していくと、まるでその会社と一緒にブランドをやっているような感覚があります。そういう意味で、デザインコンサルティングをやっている感じなのかもしれません。

─ ディレクターの仕事領域という点で、金山さんは前職と比べて違いを感じることはありますか。

金山: 前職時代には、最初の戦略設計にディレクターが入ることはあまりなくて。プランナーが別にいて、プランナーが作ったコンセプトをもとに、ディレクターが制作進行を進めていくだけという感じでした。ビズハニでのディレクターは、ストラテジックプランナーと一緒に戦略設計から入り、全て汲み取った上で、コンテンツに落とし込む。いわば、全体のコミュニケーション設計をするのがディレクターです。自分が主体的にものを作っているという感覚が、ここでは強いですね。
富田: 「ディレクターもクリエイター」みたいな認識があるかもしれません。
金山: 確かに、デザインはもちろん、骨組みや設計を作るのもクリエイターだ、という考え方はありますね。ディレクターが“作った”ものに対し、デザイナーがしっかりと色づけをしてくれることにより、モノとして昇華されていく。コーポレートサイト制作においても、経営者が考えていることを理解し、代弁してサイトに反映するのがディレクターである自分の役割だと思っています。サイト全体の流れを意識し、点と点を線で結ぶようにストーリー仕立てにしていく。ひとつの物語を作るようなイメージです。

─ 2人ともビズハニに転職する時に、今のような仕事の仕方を期待していましたか。

富田: そうですね。私も金山も、もともとwebの制作現場で働いていて、前職時代には、案件の上流部分がよくわからないことも多かったんです。何を思っているかわからないけどディレクターから言われたから制作するとか、分からないけど構成決めなきゃいけないとか。作っては捨てられ。工場じゃないですが・・・・・・。そういう虚しさがあった。結局、これ作って何になるんだっけ?みたいな。
富田: 目的が見えない状態で仕事をする感覚はありました。手段が目的化してしまうような。
金山: そういった時期を経て、ビズハニに入社したんですけど。ビズハニは、より「意味があるモノづくり」みたいなものを、ロジカルに考えている人が多い。そういうのを追求したい人が集まっているのかなと思います。

楽しさと正しさの両義性

金山: 僕らがよく言うのが、「企業より企業を理解する」ということで。
富田: うん。
金山: クライアント自身が気づいていない、見えていない部分を、こうだよねと言ってあげて、言語化・視覚化する。それが、ブランドをつくるということなのかなと思います。

─ 今日の話を聞いて、サイトを見た時に漠然と「なんとなくかっこいい」と思ったものの正体が、論理的に解明された気がします。

富田: 最初は、「訳分からないけど、なんかすごい」とただ感じてもらえればいいと思うんです。「今から説明するから、ここを読みなさい」って言われると人は身構えてしまうけど、「いいな」と感覚的に思ったものは、自然とその先が知りたくなりますよね。だからコーポレートサイトを作る上でまず、「いいな」と思わせるアート側面はしっかり強くないといけないと思っています。
金山: そうですね、入り口は単純に「きれい」や「かっこいい」でいい。僕らに期待されている役割として、かっこいいものを作るのは最低限当たり前なので、同時にその裏にしっかりとした思想設計を持つことが大事なのかなと思います。だからビズハニでは、表現に関して、「楽しい」と「正しい」の両義性っていうのを意識していて。正しいことだけを表現するのでもなく、楽しさだけを出すのとも違う。その両輪があることで、価値につながるし、人々を引き寄せる力になると思うんです。
富田: すごいハードルあがっているけど(笑)。でも、それに向けて、日々、頑張っているという。両方を100%持ち合わせるって、ひとりの人間では難しいので、ディレクターやデザイナー同士で分担している感じですね。お互いに対する敬意を持ちつつ。

─ 現在、ディレクターを募集しているということで、どういう人に入社してもらいたいですか。

金山: 今日話したような仕事のやり方が「楽しそう!」と思ってくれる人に、ぜひ来てもらえたら。
富田: ある程度の経験があれば、技術を磨くことは入社後もできるので。やっぱり大事なのは、思いや興味だと思います。自分もそこに入って同じようなものをつくりたいとか、センスのあるものが好きとか。そういうアンテナ張っている人は、すごくうちに合うと思います。


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AUTHOR INFORMATION

Haruka Yanagisawa

HARUKA YANAGISAWA

Writer & Translator

映画・IT・人材業界での会社員経験を経てライターに転身し、「AERA」「日経DUAL」などに執筆。北欧文化に精通し、書籍翻訳や講演を通じて北欧文化を日本に伝える活動も行っている。東京大学文学部言語文化学科を卒業。B&Hには外部パートナーとしてFringeブランディングプロジェクトで初めて参加。翻訳書に『フィンランドの幸せメソッドSISU(シス)』『マッティは今日も憂鬱 フィンランド人の不思議』 (ともに方丈社)など。

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