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Michele de lucci

BEES&HONEY.inc / Brand & Design Consulting Firm

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©B&H ーBrand Design Group

論理に溢れたデジタルを情緒によって変革する

September 20 2017

論理で説明できない情緒的なビジュアルを打ち出すことに、どのような意味や価値があるのでしょうか。ビックデータ、デザイン思考、ユーザーエクスペリエンス、論理的思考や規律、数値で縛られた現代だからこそ暗黙知や情緒的なアプローチで社会の在り方を変えることにチャレンジするB&H。デジタルに「ファクトベースや情報を伝えるだけ」という寂しい役割だけではなく、無意識に惹かれるための命を吹き込み、長く愛されるブランドになるための火種を作り、無形的な資産を築き、ビジネスとしても結果も出す。そんなことに挑戦しているストラテジックプランナーとアートディレクターに話を聞いてみました。


TEXT BY CHISATO SAWADA

中島竜太郎 Strategic Planner
ハワイ州立大学マノア校(Travel Industry Management)卒業。仙台にてR&Bソロシンガーとして東北のクラブを中心に活動し、「Full of Harmony」「BENI」「Yu-A」「EMI MARIA」などのフロントアクトを務める。B&H入社後はBtoB・BtoC 消費財・サービス業など、業種や業界、規模をを問わず、根本となるブランドプロポジションを抽出するためのワークショップ、経営理念などの言語表現の策定から全体のブランド戦略や情報設計、各クリエイティブ制作におけるディレクションを得意とする。B&Hでは、アンダーソン・毛利・友常法律事務所・レバレジーズ・ウズウズ・ハッシャダイ・ユニメディア・ポノス・ファーストフィルムなどの戦略設計を担当。

高田順一 Art director
数々のデザインブティックにて、Volkswagen、SUBARU、SONY、PLAY STATION 、CANON、LOFT、Häagen-Dazs、Gatorade、Suntory、PEPSI、LIONなどBtoCメーカー、食品、消費財などにおける大手企業の広告制作やWEBデザインを担当。戦略設計で策定されたブランドプロポジションを元に、デザインコンセプトへの落とし込みやブランドトーンの策定、キーメッセージ・キービジュアルの開発、ロゴなどのグラフィックエレメントなど全体のアートディレクション・フォトディレクションなど幅広い領域でのブランドディレクションを担う。B&HではCRAZY・レバレジーズ・ユニメディア・ポノス・リッチメディア・ウズウズ・ハッシャダイ・ファーストフィルムなどを担当。

─ 弊社のブランドパーソナリティを伝えるための視覚表現の一つとして情緒的なキービジュアルを撮影することが多いのですが、何か意識していることってあるのでしょうか

中島: 何をもって情緒的かってところなんですけど、うちは他の会社が表現できていないものを視覚的に、言語的に表現することを心がけていますね。ただ単に情緒的に表現しても意味がないんです。暗黙知の部分、つまり企業の雰囲気・文化・哲学とか、そういう働く人のパーソナリティなどを現地に行ったりワークショップだったりを通して可視化していく、その可視化しづらい部分っていうのが、働いている社員さんとかパートナーさんがそのブランドと関わりを持ちたいって思う重要な要素を担ってると思うんです。

高田: 情緒的な表現を狙っているというか、企業の性格を分かりやすく視覚化すると、他とは違う”個性”のある表現になっていくんですよね。似たような職種でも絶対どこかで会社の独特の個性があるから、それを掘り下げて最大限振り切って表現するっていう部分で差別化できているんじゃないですか。

中島: そう、違いを見出すっていうすごいシンプルなことなんですよね。そういう部分をデザインだったり、言語部分に落とし込もうとしているんじゃないですかね。その独特な個性の表現方法として、サイトの演出にこだわった技術的なインパクトだけではなくて、その企業の価値提供となっている競争優位性や経営者の想い、会社の在り方などの暗黙知を引き出して情緒的なアプローチで他との違いを表現していきたい、それを社会に浸透させて影響を与えていくことがうちの役割ですかね。センスよくっていう会社のビジョンにも通ずるところです。


─ 企業によっては必要な情報だけを紹介できればということも多いと思いますが…

中島: もちろん予算や納期、品質などクライアントが求めているニーズによって解決策は様々だと思います。でも、理想は事実だけでいいという企業さんにも、うちを通してそういう価値観を変えてもらいたいですね。少なからず自分たちだけでは表現できないことを、B&Hというフィルターを通すことで個性や魅力を伝えていけたらなと。

─ あえて何の会社かわからないようなインパクトのあるビジュアルを使うことも多いですよね?

中島: うちはズレているんでしょうね。笑 というか、ズレたコミュニケーションにしてほしいっていう願いをもってやってるんです。でも、パッと見た感じは、なんの会社かわからないかもしれないのですが、実は裏では顧客体験を意識した論理的な情報設計をしているんです。
高田: 広告というか、最初のインパクトって2~3秒で決まるって言いますから、サラッと行かずにまず最初にココロを動かしたい、引き止めたいっていうところですね。

中島: まず最初に、他の競合に埋もれないってところが強いですね。
高田: そう、そこには戦略の時点から考えてきた色んな意味も乗っかっているんで。ただのインパクトではないんですよね。埋もれないことに加えて、どう気持ちを動かすか。人の感情に訴えたいんです。

中島: その方が中長期的な関係を築いていけますよね。存在意義に沿ったインパクトを出すことで最初の引っかかりをつくってあげて、本質的な魅力を伝えていきたい。そうすると、選ぶ側からして”ここがいい”と言いやすい、わかりやすく選びやすい状態をつくってあげられると思ってます。


─ 外人のモデルをビジュアルに多く起用するのは何故ですか

中島: 第一印象での引っかかりが大きいですね。見栄えがいい、美しい、などアート性でしょうか。あと情緒に引っ張られず、メッセージとか世界観が伝わりやすくなるんです。うちではよくこのようにフックとなるようなコンテンツを”What”って呼んでいます。根本となる”Why”を軸として、あとはいかに戦略的にも洗練されたコミュニケーション”How”ができるかが重要だと思っています。

高田: 多くの成長しているグローバルブランドもそうですけど、アイコンとして中性的で受け入れられやすいんです。マネキン的な。例えば、ララランドのオープニングを日本人が踊ってたら…。あとは多様性ですね。様々な価値観がある中で、ダイバーシティやグローバルを尊重したい文化にするのであれば、日本人だけで表現することは難しいですし。もちろん届ける相手のこともしっかり考えています。日本人モデルの方が顧客のインサイトをつかむ場合には日本人のモデルも起用していますね。FirstFilmさんの事例とか。でも、どの人種のモデルを起用するとかは本質ではなくて、もっとグローバルでいいと思うんです。逆に色んな国の人が混ざってても。

中島: うちで頼むときに、直接的には言われないけどスタイルで差別化をする、識別性を高めるってところが求められてるんですよね。そういう企業ブランディングをするところは1割にも満たなくて本当に少ないんです。埋もれないために。あえてスタイルで差別化する為の手段ですかね。

─ 実際に、モデルや独自の情緒的な視覚表現がクライアントにどんな結果をもたらしているんでしょうか。

中島: ハッシャダイさんの事例で言うと、ターゲットは日本の中高生、非大卒の子たちなんですけどサイトでは外人のモデルを起用していて。機能性としてはハローワークと同じだとしても、自分の関わるものを自慢したい、自己表現したいっていうミーハー心をくすぐる「なんかいいな」を作り出せて結果に繋がったと思うんです。本質をついたビジュアルの力っていうのは1つの信頼でもあるんですよね。

高田: たとえば商品を見て「可愛いから買う」とかっていう簡単なことなんですよね。

中島: ほんと直感的なところですよね。自己表現ベネフィットに訴えるようなデザインを武器にして埋もれずに集客を高めたい、そういうお客さんは多いと思いますね。「数値的な結果としてもデジタルマーケティングでサイトの改善を行うよりも数倍の結果が出ました!」という声や「売上や利益だけではなくて、マネジメントや広報、採用にも大きな影響があった!」といってくださることが最近はより多くなってきましたね。


─ では、制作にあたってはどういう行程を経ているんですか?

中島: 戦略的な部分ですと、まずビジネスモデルから把握していきます。どのような価値連鎖フローがあり、どの部分に企業のコアコンピタンスや重要なケイパビリティがあるのか。また経営者はどういった戦略的価値観で物事を判断しているのか。競合他社とどこが違うのか。マーケティングの部分でいうと、市場、企業、競合、顧客、ポジショニング分析などをしてどこを尖らせたらいいのか、どのように打ち出せばコミュニケーションが改善されるのか、そこから企画をまとめていきますね。何を軸にして課題を解決するか、とにかく時間をかけてヒアリングをしてクライアントの気付いていない部分の情報を収集していきます。
高田: その企画をうけて、今度は誰に届けるかっていうコピーを作っていきますね。デザインコンセプトをたてて、太郎さんが考えてくれた戦略部分と合体することでより力強くなるようなビジュアルを考えていくっていう流れです。

中島: 現状の課題や問題を探る所からプロジェクトに取り組む会社さんが多いと思うんですが、まず何の為に存在しているのかっていう目的論を決めるところ、それが埋もれないための第一歩だと思ってます。自分のことをよく知らないから否定されないように行動する、結果的に誰もが納得いくようなコンテンツに均質化されてしまって、企業の色が消えてしまうんです。そういう本質的なところをお客さんと確認しながらデザインを作っていくんですが、うちはプランナーとアートディレクターがフラットな関係性で意見をぶつけながら進めていきます。

高田: 表現が偏ることもありますけどね。多数決にならないように、高いレベルの意見交換ができるのが理想ですね。デザインを作る上で、目的が決まればそれを思い切り伝えるだけなんです。だからこそ大事な行程ですね。
中島: FirstFilmさんの事例もそうですね。もの凄い映像手法があるわけではないけど、ここは撮り押さえてほしい!っていうところをしっかり撮り残す技術、残したいと思うお客さんの想いを大切にしたい。そういう目的を際立たせてあげることに力を注ぎました。受け入れて向き合って、そうすると消費者にも伝わる。情緒ベネフィットに訴えて好きになってもらう。そういう感覚ですね。

─ また、高田さんは過去に広告業界や制作会社での仕事も経験されてきた中で、広告からブランディングへ移行した経緯や今後のクリエイティブについてどう考えているか聞かせてください。

高田: 最初からブランディングに興味があったわけではないんですけどね。特設サイトやキャンペーンなんかは数ヶ月で消えてしまう。コーポレートサイトでさえ3年もあれば変わってしまう。B&Hで働くうちに、やっぱり長く愛されて、受け継がれるものに携わりたい気持ちは強くなりましたね、自然と。商品を売る企業だとその商品が顔になっていくけれど、そうじゃない企業ももっと自分の色を出していくべきなんじゃないかって。そのためにWEBに広告的表現をもっと取り入れてブランドイメージを強くしていく、そうすると働いている人たちの貢献感とか幸福感が増していくと思うんです。
中島: 貢献感を得られるかどうかって大事ですね。所属している感覚が強まると、それが幸福感につながっていきますよね。
高田: 情報が分かればいいとかっていうデジタルの寂しさも感じて。感情をのせて、結果的に長く残るものを作りたい。だから表現も記憶に残るものをっていう方向になっていきましたね。一度しっかりと企業のトーンを作ってあげるのがうちの仕事。あとは自分らしく自由に表現してもらって。そういう会社が増えてほしいなと思いますね。


─ 何か今後してみたい仕事ってあるんですか?

高田: 喫茶店のマスターですかね。コーヒー淹れる人。
中島: もうアートディレクターじゃないですね。笑
高田: まぁ、自らブランドを創る側もやってみたいですね。なかなか現実は難しいですけど。常に創り出す仕事に携わっていけたらとは思ってますね。

─ 最後に、B&Hと共創することでクライアントや社会にどんな影響を与えられると思いますか

中島: センス良いって言う言葉を明確化していって、本質を踏まえたコミュニケーションができる経営層が増えてほしい、そういうマインドが芽生えてくれるといいですね。クライアントにも関わる人にも幸せになってもらいたいっていう気持ちです。おこがましいけど、センスが良いって言えることは理想的ですから。例えばプレゼントをするとき、相手のことを考えるのは当たり前だし、自分らしさも表現しつつ、時代に合わせた背景も踏まえますよね。センス良いってそういう総合的なバランスが良いってことだと思います。

高田: センスよいのクオリティの基準も上げていきたいですね。
中島: 最近のお客さんに共通している本質的な課題は、同質化・均質化、それと新卒市場主義ってところです。自社のことをちゃんと分かっていれば、「今伸びている会社だから」っていう原因論的な理由で入社してすぐ辞めてしまうとかが起こりえないから。そういうマッチング精度を上げたい企業さんがうちにくることは多いですね。

高田: うちとしては品質を上げて規模を大きくしていくことは必要になりますよね。まぁ、世界的に見たらまだまだで…もっとやりたいですけどね。
中島: それがB&Hの暗黙知ですかね。笑

高田: でも拒んでも結局はいつの時代も世界に向けていかなくてはならないから。常に先に行く姿勢を持って影響を与えていきたいですね。


他とは違う何か を表現する。一見難しいことのようですが、自分としっかり向き合い、気付かなかった部分を引き出していく、基本的なことかもしれませんが、その基本を丁寧に整理し、再構築する作業こそブランド力を上げるための第一歩であり、人の心に響くビジュアルを作り上げるのでしょうか
クールなビジュアルから、依頼するときにハードルが高いように見えるかもしれませんが、今回のお話で、実はより深い感情の部分で接していたい、という情や人間臭さがにじみ出ている気がしました。

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