It just alters your entire existence

Joel Tudor

BEES&HONEY.inc / Brand & Design Consulting Firm

Menu

View More
Close
Return
©B&H ーBrand Design Group

見た目だけのブランディングはもうやめにしよう

February 29 2016

ブランディングという言葉が広告・デザイン業界ではよく使われています。ブランディングってとても便利でかっこいい言葉です。ブランディングというだけで、何か変えてくれそうなイメージだったり、センスのよい、かっこいいイメージがある。言葉の定義が広いこともあり、世の中の「ブランディング」という言葉にはかなりの認識のズレがあり、「ブランディング」という仕事でサービスしている会社だからこそ、もうちょっと詳細に定義できれば良いなと思っていたりします。

まず大きく分けてブランディングは外面的なブランディングと内面的なブランディングに分かれています。外面的なブランディングとは、その名の通り「見た目」に関してのブランディング。会社の商品・ロゴ・オフィス、グッズ・広告のビジュアル、スタッフの服装など、視覚的に見えるもので形成されますこれを私たちは「Tangible Asset(見える資産)」と言っています。

一方、内面的なブランディングとは、「見えないもの」に関してのブランディングで、会社のビジョンやクレドなどの価値を生み出すためのMind Identity(思考・哲学・信念・文化)などで形成されます。これを「Intangible Asset(見えない資産)」と呼んでいます。本質的に、企業の「見える資産」はこの「見えない資産」によって創り出されます。つまり、どのような思考(こだわり)を持っているから、その結果として「見える資産」として世の中にアウトプットされているのです。ロゴ一つにとってもそうですし、商品やサービスの内容にも同じことが言えます。下記は私が尊敬している、哲学をベースにキャンペーンにした素晴らしい例です。

Apple – Think Different(人々と違う思考を持て)
TBWA\CHIAT\DAY のCraig TanimotoやLee Clowなどによって手がけられたキャンペーン
Volkswagen- Think Small (世界的なAd Agency BBDのBill Bernbach のアイデアは世界の広告を変えた一つの例)
Red bull – Gives you wings(翼を授ける)
Under Armor – I Will
PEPSI – Forever Challenge, PEPSI CHALLENGEなど
日本のブランドだと(Toyota(Lexus), Calorymate,Cup Noodle, 無印良品など)

これらのキャンペーンの根本にある「思考・哲学・信念・文化」が商品やサービスを作る上で重要な役割を果たしているのです。 つまり、私たちはすべての広告キャンペーンやブランディングは「企業の哲学」をベースに展開する必要があると信じているのですが、現時点でこのようなコミュニケーションをとっている企業はごくわずかです。なぜかというと、「外面的なブランディング」さえあれば、ビジネスとして成功してしまうからです。さらに突っ込んで言ってしまうと「外面的なブランディング」をしなくても、成功するビジネスは世の中に多く存在しているからです。 また、「内面的なブランディング」は非常に数値化・可視化しづらく、経営者の時間を取ってしまうことや、哲学自体を定義することが難しいことから、なかなか実行されません。そして、企業のビジョンや哲学・思考性を整理したとしても、短期的に数値として結果が出るものではなく、継続して行うことで、徐々に体感するものなので、プロジェクトとして運用することもかなり難易度が高いのです。だからこそ、内面的なブランディングほど真似されづらい(模倣可能性が低い)という強いメリットもあります。

現在の広告・デザイン業界で「内面的なブランディング」のサービスを提供しているデザイン会社はごく稀です。それは「内面的なブランディング」が広告・デザイン会社にとって専門外の領域であり、ハイリスク・ローリターンだからです。企業哲学のキャンペーンでは数値的な結果を残すことの難易度が高く、さらに戦略の構築までに通常以上の時間を用するため「短期的で定量的な結果」という費用対効果で考えられる顧客ニーズを満たす事に逆行してしまいます。そんなリスクを負うよりも、今流行のPR手法を使って、クールでセンスのよいかっこいいものを作ったり、世間をアッと言わすような最先端のテクノロジーを使ったプロモーションをしたり、顧客のインサイトをつくコピーを考えたり、デジタルマーケティングを駆使して定量的な効果のわかる広告枠を提案したり、バズるようなPRで定量的な顧客ニーズを満たすことが広告代理店やデザイン会社に求められているからです。

これは決して「外面的なブランディングが悪い」というわけではありません。外面的なブランディングも内面的なブランディングと同じく、もしくはそれ以上に重要な要素です。しかし「内面的なブランディング」が根本にある上で「外面的なブランディング」をすることで、ブランドがそして「外面的なブランディング」がより輝くのだということを私たちは信じています。

Steave Jobsは1997年にはこの「内面的なブランディング」の重要性をスピーチで訴えています。「外面的なブランディング」と「内面的なブランディング」、どの企業もAppleを超えることができないのは、この二つの要素を兼ね備えた企業が少ないないからではないでしょうか。

ブランディングの定義を「クオリティの高いクリエイティブで企業哲学を伝えること」として、この定義を理解する企業や経営者、クリエイターが増えれば、世界が今よりもちょっとセンスよくなるのではと思っています。

Return to magazine

Other Journal